東大、ハーバード、三島由紀夫

平成24年度(2012年)東大学部入学式 濱田純一総長式辞

(新入生に向けて)

今日あらゆる場面でグローバル化がすさまじいスピードで進んでいる世界では、国境という障壁がどんどん低くなってきています。こうした時代には、とりわけリーダーとしての役割を期待される人間には、たんに一つの国の枠の中だけではなくて、国際的に通用する競争能力が求められます。皆さんの能力は、ただ日本人相互の間で競争し比較されるだけではなく、他の国の優秀な人々とも比較され評価されていくことになるわけです。

(東大入学式に出席している保護者に向けて)

皆さまも、いまの時代が、皆さまの若い頃と比べて、非常に厳しく見通しにくい時代になっていると感じておられるだろうと思います。かつては、東大生、あるいは東大卒という肩書があれば、それなりの人生を送ることができました。しかし、私は、これからの時代、いまここにいる皆さまのお子さんが活躍する時代は、国際化の度合いも社会経済の姿もいまとは大きく異なる時代になるだろうと思います。

昭和45年(1970年)「果たし得ていない約束ー私の中の25年」三島由紀夫

私はこれからの日本に大して希望をつなぐことができない。
このまま行つたら「日本」はなくなつてしまうのではないかといふ感を日ましに深くする。
日本はなくなつて、その代はりに、無機的な、からつぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであらう。

それでもいいと思つてゐる人たちと、私は口をきく気にもなれなくなつてゐるのである。

平成25年(2013年)教育改革元年 ザ・ブルー・マーブル

エネルギー溢れる、知的好奇心旺盛であるべき10代の若者が、家と塾と学校のトライアングル地帯にしか生息しない現状はおかしいことにもうみんな気づいています。

人生が「中学受験対策→高校入学→大学受験対策→大学入学→就活開始→就職→→定年」という定食メニューなんかでは無い、と知っている一部の子どもたちは、すでに各地で自分で選択したアラカルト・メニューを実行しています。いえ、子どもは誰も、一律に定食メニューを食べるのがおかしいとわかってはいるけれど、空気を読んでやめられないでいるだけです。私には「定食崩壊」の兆しが見えます。

子どもの好奇心は旺盛です。検定教科書を飛び越えて別次元へ進んでいます。海外のオンライン教育の有効活用(道具としての英語が使える前提です)や下記リンクのようなオンライン雑誌のおかげで、子どもが本の紹介を目にする機会が増えて、かえって国内外の紙の書物を手にしやすくなっていますし、その書物をヒントに海外に飛び出す子どもや若者もいるでしょう。

コンピュータやネットで子どもの日本語がおかしくなる、とか時間の無駄だというのは違います。ネット上のやりとりで彼らは「恐るべき要約能力」「驚嘆すべきデザイン・キャッチコピー能力」を身につけています。私はいくつも例を挙げられます。

また、時間の無駄どころか、ネットがあれば海外大学にも楽々出願できてしまい、かえって国内の受験のほうが旅費や受験料が高くつくようなことも起きています。

今や地方にいても、インターネットのおかげでこんな選択肢も可能です。「大分の公立高校で過ごし、高1まで海外に出たことはありませんでした!」

要するに、グローバル化やITにより、子どもの選択肢は限りなく拡がりました。プラスにするか、マイナスにするか、いやおうなしに個人に決断が迫られます。

日本だって負けられません。きっとこれから小〜大学の教育改革は進むでしょう。国内外から多様な才能を持つ若者を惹きつけて、「知の集う場所」として東大のプレゼンスを獲得するには今変革するしかない、固く決意した濱田総長のお気持ちが拡がって、遠くない未来にわくわくするような学校が日本中にできることを切に願います。

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