後編:良いサマースクールの見分け方と「グローバル教育」 (2)多様性って何?〜廣津留真理の子育て応援日記 79
前編はこちら:良いサマースクールの見分け方でわかる「グローバル教育って何?」
来年に備えよう、英語サマースクール、良い例・悪い例(内容・主催者編)
「グローバル教育・リーダーシップ・英語で自己表現」を掲げる英語サマースクールの良し悪しの見分け方のポイント 、今日は3つ目の「多様性」についてお話します。
(3)多様性を認めるだけではなく、それを活かせるかどうか
食べ物だけでもこんなに多様な世の中
私が公立小学校に通っていた当時、給食に必ず牛乳が出ていました。牛乳が苦手で飲めない同級生は、他の生徒が食べ終わって遊び始めても、机について苦手な牛乳を全部飲むように指導されていました。
いまでは、牛乳を飲めない人は「ラクト・イントレランス」といって、牛乳に含まれる乳糖分解酵素が少ないか欠損しているためにお腹をこわしてしまう、とわかっているので、ラクトフリー(乳糖なし)の食べ物が選べるようになりました。
同様に、小麦などに含まれるグルテンが苦手な人は、グルテン・フリーの食べ物を選べます。アメリカのオーガニック系スーパーでは外箱に「グルテンフリー」と書いてありますね。
ちなみに私は、エビカニアレルギーですから、「エビカニ・フリー」の料理を常に選んでいます。
食べ物に関して「だけ」でも、世界中に住む様々な人に様々な制約や許容範囲があります *(*食べ物の多様性の話は次号に続く)。 SIJ ではアレルギーを持つ受講生のために、スタッフが医師によるアレルギー講座を受講して、万が一に備えてエピペン(アドレナリン自己注射)を準備しています。
インターナショナルスクールはその性質上、食べ物はもちろん、宗教上の休日や日常の慣習まで気配りが大変でしょう。しかし、最近グローバル教育をやたらに唱えるのはもっぱら、日本の普通のドメスティックな教育機関と塾です。「注文はとりあえずビール」「新卒一斉就活」「周りがするなら私も」の国で、多様性の寛容をどのように教えるのでしょうか。
2)で批判した宿泊型英語キャンプの言う「多様性の寛容」は、講師陣が「さまざまな外国から来た人」、この1点です。ちなみに今は21世紀です。。。
(写真3:イタリアのチーズだけでもこれ以上の種類があるわけです)
いろいろな選択ができる世の中に寛容であること ある生徒さんのストーリー
Summer in JAPAN 2013を受講してくれた当時 15歳の生徒 Aさんから、この夏大学に合格した、と嬉しいお知らせがきました。Aさんは、 201 3年当時、不登校でした。小学校5年生からずっと学校に通っていなかったのです。この子は単に学校が合わないだけで、やりたいことは内に秘めている、それをどうにか外に出してあげたい、お身内の方の深い愛情と理解で、Aさんは SIJ 2013にやってきました。
脚本から演出まで全て手作りの英語劇を作り上げるパフォーミングアーツのクラスを受講して7日間、自己表現の楽しさ、チームで作品を作り上げる達成感を実感、自室に引きこもっていた自分の殻から見事に抜け出した Aさんは、中学さえ卒業していませんが、大倹(高等学校卒業程度認定試験)に合格、来年からは大学で演劇を学びます。
高校には通わなかったけれど大学で学べる、これはすばらしい多様性の寛容の一例です。
(ちなみに、 SIJ2013でその子と同じ劇に出演したBさんは、劇中では「 文科省に入って日本の教育を変える!」と叫ぶ高校生の役でしたが、その後英語が大好きになりブルーマーブル英語教室に通い、東大に合格しました。日本の教育を変えてくれると期待しています!)
子どもの進路選択はカラフルであるべき!
(写真4:9月6日発売の「世界に通用する一流の育て方」では、不得意は切り捨てて得意は3を5にする「集中と選択」について書いています)
今後増えていく性的多様性への教育
SIJ や教育関連の出張でアメリカに行くことの多い私には、アメリカの大学生は LGBT( レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーなどの性的マイノリティ)が日本よりも多いようにみえます。カミングアウトしている数が多いのか、実際に多いのかは専門でないのでわかりませんが、今後、若い世代の性的な多様性も教育テーマに上がってくるのは間違いありません。
当然、 SIJ にやってくる大学生も例外ではありません。日本の子どもたちは、男子大学生には「 ガールフレンドはいますか?」女子には「ボーイフレンドはいますか?」と普通に尋ねますから、そこでどう答えるべきか。どんな反応があり、どう対応するか。これは本当に身近な問題です。
グローバル教育=英語でコミュニケーション、リーダーシップ、多様性の寛容、みんな仲良く、
などと提唱している学校や塾で、本当にそこまでの多様性を考えているのはどのくらいでしょうか。
以上、SIJのような学びを提供する場がどんどん増えていけば、お子さまの選択肢がひろがり、校舎という建物を中心に生徒が毎日通学する「学校」さえも不要になる時代が来るかもしれません。
ボランティアをかってでてくれるやる気あふれる大学生、日本のソフトパワーの強み「おもてなし」精神でご協力くださる地域のみなさま、人を動かし繋いでくださる企業・学校・自治体のみなさま、7日間セミナー受講生とご家族様みなさまとの理念の共有があってこそ、SIJは続いています。受講生とご家族様、未来を自分で作る勇気とパワーが今後ますますみなさまのご家庭に満ちますようにと切に願います。
by ひろつるまり
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